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「ガシャー!」
金属のこすれる音がしました。 ボクは2階の窓から見ます。 自転車がはまっています。 石をほじくり出した穴に、 自転車がはまっているのです。 そばに泥だらけになった少年がいます。 少年は、ゆっくりと起き上がろうとしています。 ボクは、2階の窓から見ます。 少年は、自転車を穴から出します。 ゆっくりと自転車を押します。 (帰るのかな?) と思っていたら、 クルっと向きを変え、自転車にまたがりました。 そして、勢いをつけてペダルをこぎます。 どうやら、少年は穴を飛び越えようとしているのです。 ボクは、2階の窓から見ます。 「ガシャー!」 2度目の金属のこすれる音がします。 どうしても、前のタイヤが穴にひっかかるのです。 2階の窓からみていたボクと、 倒れた少年の目が合いました。 『ガ・ン・バ・レ』 ボクは無言で小さく、うなずいてみせました。 少年は少しはずかしそうに微笑み、 再び自転車を押し始めました。 「もっと離れろ!助走をつけろ!」 ボクは夢中で叫んでいました。 少年の挑戦している事は、とてもくだらないことです。 自転車で穴を飛び越える。 たったそれだけのことです。 その、たったそれだけのことの中には、 多くの大切なものがあるはずです。 ペダルを思いっきりふむ少年を見てボクは思いました。 「グワッシャーー!」 という、今までよりも大きな金属音が響きました。 穴にはさまる自転車と、倒れた少年がいます。 少年は、歯を食いしばって起き上がります。 少年は自転車を見て、泣きそうになっています。 なぜなら自転車の前輪が、 「パックマンが口を開けた時」 の形になっているからです。 スポーク、ぐにゃぐにゃです。 少年は、回ることのない前輪を抱え、 ゆっくりと、穴を後にしました。 ボクはその少年の後ろ姿を見て、 「この世の中、まだまだ捨てたもんじゃないね」 と、思うのでした。 |
35日目 ストーン(番外編)
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